母子生活支援施設に入所する人には様々な理由がありますが、DVや経済的な事情など、子供を抱えて今すぐ自立するのが難しい母親が入所を考えることが大半です。
入所したいと思っても費用がかかるのかもしれないと考えると躊躇しちゃいますよね。
実際母子生活支援施設を利用すると、どれくらい料金がかかるものでしょうか。
そこで今回は、母子生活支援施設に入所する為の費用負担はどのくらいかかる?ということで、母子生活支援施設の費用面についてまとめてみました。
母子生活支援施設の費用(自己負担額)はどのくらい?
▶ 徴収額は、前年の所得額によって決まる
▶ 電気・ガスなどの光熱費は実費
▶ 価格は児童養護施設の半額くらい
母子生活支援施設の徴収額(本人負担額)は、「児童福祉法」に則って決められています。
各自治体が住民税額や所得税額に応じて階層分けをし、所得に応じた負担額を本人から徴収することになっています。
基本的には所得が低い人ほど、安く施設を利用できるようになっています。
保育園や児童養護施設など、児童福祉法に則って作られた施設も、母子生活支援施設同様、所得が低い人ほど負担が軽くなっています。
「所得が低い人」と書きましたが、住民税額はそもそも前年の所得によって決まりますし、所得税額については基準額表において前年分と明記されているので、どちらの場合も正確に言えば「前年度の所得が低い人」です。
では、具体的に施設の使用料はいくらくらいになるのでしょうか。
一例として、「東京都足立区」と「秋田県仙北市」の母子生活支援施設の基準額をみてみましょう。
階層区分 定義 徴収金基準額(月額) 東京都足立区 秋田県仙北市 A 生活保護世帯等 0円 0円 B A階層を除き当該年度分の市町村民税の非課税世帯
0円 1,100円 C1 A階層及びD階層を除き、当該年度分の市町村民税の課税地帯であって、その市町村民税の額の区分が次の区分に該当する世帯
均等割の額のみ(所得割の額のない世帯)
2,200円 2,200円 C2 所得割の額がある世帯 3,300円 3,300円 D1 A階層及びB階層を除き前年分の所得税課税世帯であって、その所得税の額の区分が次の区分に該当する世帯
15,000円以下 4,500円 4,500円 D2 15,001円~40,000円 6,700円 6,700円 D3 40,001円~70,000円 9,300円 9,300円 D4 70,001円~183,000円 14,500円 14,500円 D5 183,001円~403,000円 20,600円 20,600円 D6 403,001円~703,000円 27,100円 27,100円 (※) D7 703,001円~1,078,000円 34,300円 34,300円 (※) D8 1,078,001円~1,632,000円 42,500円 42,500円 (※) D9 1,632,001円~2,303,000円 51,400円 51,400円 (※) D10 2,303,001円~3,117,000円 61,200円 61,200円 (※) D11 3,117,001円~4,173,000円 71,900円 71,900円 (※) D12 4,173,001円~5,334,000円 83,300円 83,300円 (※) D13 5,334,001円~6,674,000円 95,600円 95,600円 (※) D14 6,674,001円以上 170,200円 全額徴収 ・(※)「秋田県仙北市」の場合、D6~D13については、その月のその入所世帯にかかる措置費等の支弁額(全額)と、上記の額のうちいずれか小さい額
・上記は施設の利用料です。電気・ガス・水道代などの光熱費は、実費で支払います。
他の自治体もいくつか調べてみましたが、上記のどちらかのパターンの自治体が多いようです。
所得税と言われると、ピンと来ないかもしれません。
「住民税」や「所得税」は控除などの状況によって変わってきますので、一概に年収いくらくらいがこの階層ですよというのが言えないのですが、一例をあげると東京都における、所得割・均等割ともに住民税の非課税世帯は下記のとおりです。
①所得割・均等割とも非課税
ア 生活保護法による生活扶助を受けている方
イ 障害者・未成年者・寡婦又は寡夫で、前年中の合計所得金額が125万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4千円未満)の方
ウ 前年中の合計所得金額が区市町村の条例で定める額以下の方
〈東京23区内の場合〉
・控除対象配偶者又は扶養親族がいる場合
35万円×(本人・控除対象配偶者・扶養親族の合計人数)+21万円以下
・控除対象配偶者及び扶養親族がいない場合
35万円以下
引用元:東京都主税局
例えば、母子家庭の場合ですと、自営業ではなく給与をもらっている方であれば、年収204万4千円未満はBの階層になります。
それ以上の給与をもらっている方は、年末徴収等でもらう源泉徴収票の「源泉徴収税額」を見れば自分の所得税額がわかります。
徴収額は児童福祉法に則って自治体が独自に決めるものですので、独自の徴収額を設定している自治体もあります。
例えば、京都府八幡市では、徴収額の上限が2,500円になっています。
また、下関市の場合は、階層がD5階層までとなっています。
この両者は、自治体独自で価格を決めている例外です。
このように、各自治体によって徴収額がだいぶ違う場合もあるため、実際の徴収額を知りたい場合は、お住まいの自治体や福祉事務所に問い合わせてみましょう。
ちなみに、母子生活支援施設は低所得で生活に困っている女性も多いことから、児童養護施設などに比べて本人の負担額は少ない額(半額ほど)になっています。
自己負担分が払えない場合、費用の免除や減額はできる?
▶ 事情があれば、減免など対応してくれる自治体が多い
▶ 減免には、各自治体で手続が必要
▶ 減免の内容に不服な場合は、再審査の手続をする
母子生活支援施設は、生活が困難な母子を助けるための施設です。
前年は正社員として働いていたのに、諸事情で正社員での継続が困難なためすでに仕事を辞めている状態とか、DVを受けて着の身着のままで飛び出してきたので所持金がわずかしかないという方も入所します。
基本的に、各自治体では様々な事情がある方に、費用の免除や減免の措置があります。
例えば上記の表の足立区では、「生活保護世帯」や「元々所得が低い世帯」のほか、以下の時に減免の対象となります。
その年に前年の所得額の10分の1を超える災害又は盗難若しくは横領による損失(損害保険金等で補てんされる金額を控除する。)を生じたとき
その年に前年の所得額の100分の5又は所得税法に定める最高限度額を超える医療費(保険金等で補てんされる金額を控除する。)を支出したとき
その年に稼働能力のない世帯員が増加したとき
その年に主たる稼働者が失業したとき
その世帯の前3箇月の平均収入額(賞与を除く。)が前年の平均収入月額(賞与を除く。)より1割以上低額と認められるとき
区長が特に調査のうえ必要と認めたとき
引用元:足立区
堅苦しい文章なので、読むと「???」とパニックになりますが、これは災害等でお金を失ったり医療費がかかったりして、前年の世帯収入と今年の世帯収入が著しく違う場合などに、いろんな事情でお金が払えない場合に減免措置があるということです。
例として足立区を挙げましたが、だいたいの自治体では事情があれば減免措置を取ってくれます。
では、もし今持ち合わせがなくて、規定の使用料を払えない場合はどのようにしたらよいのでしょうか?
その場合、まずは施設の相談員さんや福祉事務所の方に相談をしてください。
事務的にどういった処理をすればいいかを教えてくれます。
例えば上記の足立区でしたら「使用料減額・免除申請書」という指定の様式を記載して足立区長宛(区役所)に提出をします。
その後、役所から書類で、使用額の免除・または減免がされたかどうか通知が本人に届きます。
その通知の内容が不服な場合は、指定の期間内で再審査の請求をすることが可能です。
ただし、本当は払えるのに払わなかったら不正ですし、払えない事情があるのに何も手続きをとらなければ未納扱いになってしまいます。
悪質な場合は退所もありえますので、ルールは必ず守りましょう。
さいごに
母子生活支援施設は、母親の自立を助ける施設であるとともに、子供を安定した環境で生活できるように支えてくれる施設です。
DVにより働きに出ることができないなど、経済的な問題で離婚ができないと苦しんでいる方も多いかと思いますが、そういう時こそ「行政」があるのです。
一人で悩まず誰かに助けの手を求めてくださいね。