母親にとって性別が違う男の子って、謎な生き物です。
筆者も小学生の男の子を育てていますが、女の子と比べて感情表現や言葉の使い方が下手だなと思うことがあります。
寂しければ「寂しい」、イライラしたときは「こうして欲しい」、そう素直に言葉で表現すればよいのに、ダンマリを決め込んだり、いきなり感情をぶつけてきたり、対応が難しいんですよね。
小学生の男の子がわがままを言うとき、どんな心理なのでしょうか?そしてどんな対処法をすれば良いのでしょうか?心理学も交えて接し方を解説していきます。
[小学生の男の子]わがままな子どもの心理と接し方は?
▶ 「低学年」は環境の変化でイライラしやすい
▶ 「中学年」はギャングエイジ。「結果よりプロセス」を大切に
▶ 「高学年」は大人と一緒で人と人との付き合いを
大人の男性と小学生の男の子を比べると、「なんでここまで違う生き物なの?」と思ったことはありませんか?
小学生の頃の子供はぐんぐん成長していき、低学年と高学年では理解度もだいぶ違います。
また、ひとえに「わがまま」と言っても低学年と高学年では理由も違います。
子供のわがままの心理状態ってどんなものなのでしょうか。
学年ごとに心理状態と接し方を分析していきます。
わがままな子どもの心理 小学校低学年
幼稚園や保育園の時期はなんでも「できたね~!すごいね~!」だったのが、小学生に入ると親や学校の要求が厳しくなっていきます。
毎日朝早く起きて重いランドセルをしょって学校に行き、学校では勉強ばかり。
帰ってきたら親からは「明日の準備は出来たの?忘れ物しちゃダメじゃない。宿題やりなさい。」と言われる。
このように小学校に入る頃は環境が大きく変わり、子供も急激な環境の変化に疲れる時期です。
そのイライラを上手に発散できず、親にわがままを言い出します。
低学年の時期の男の子にとって、親は安全地帯で何をしても許される場所だと感じています。
特に母親はイライラをぶつけるターゲットになりやすく、母親側も「なんで私にだけ?舐められているのか??」とイライラしてケンカになります。
この時期は普段から「子供が存分に甘えたり楽しめる場所を作ること」を意識してください。
ただ、一手に母親がその役を引き受ける必要はありません。
週末は父親とキャッチボールをしたり、祖父母が近くに住んでいたら祖父母の協力を得たり、家族での楽しい時間を過ごし、さみしい思いを減らすことが大切です。
子供が小学校生活に慣れてくると、ある程度わがままも落ち着いてきます。
わがままな子どもの心理 小学校中学年
10歳前後は、子供から大人に成長する時期です。
「ギャングエイジ」という言葉を聞いたことがある親御さんも多いのではないでしょうか。
小学3年生くらいになると子供の自立心は急激に発達し、「徒党を組む」ということで自分のポジションを掴み、彼らと遊ぶこと自体に大きな喜びを感じるようになります。
この時期は、自己のコントロールがまだまだできないので周りに流されやすく、歯止めがきかないのも中学年の特徴です。
友達を集団でからかっていじめに発展したり、新任の先生に反抗して学級崩壊を起こすのもこの時期に起こりやすくなっています。
中学年の男の子のわがままには「結果よりプロセス」を意識してください。
大人は結果が分かっているので、ついつい子供に行動をさせる前に禁止しがちです。
しかし、結果に至るまでのプロセスを飛ばしてしまったら子供は学びません。
事細かく注意をする方向から、まずは自分で考えさせましょう。
大人の意見を言うのは子供の意見を聞いてからです。
口うるさく叱るのは「友達を傷つけた」「約束を守らなかった」など人として問題であるものだけにして、あとは「あなたに判断を任せるわよ」という信頼の態度を見せると、子供も自分で善悪を考えていくようになります。
しかし、あまり自由にさせすぎるとこの時期の男の子は暴走しがちです。
「気持ちを受け止める。けれども理不尽な要求は飲まない」というのも大切ですよ。
わがままな子どもの心理 小学校高学年
高学年になると声変わりも始まり、親を避けるようになります。
なかなか本音を言ってくれない上に、わがままを聞き入れないとキレるこどもにこちらも切れたくなりますよね。
子供のわがままに親も葛藤しますが、子供も大人になる手前で一番葛藤する時期です。
心理カウンセラーの根本裕幸さんは、思春期の反抗についてこう語っています。
多くの動物は思春期に差し掛かると親が子どもを過激に虐待し、巣を追い出します。
キタキツネのドキュメントをご覧になったことがある方は覚えてらっしゃるかもしれませんが、何度も何度も巣に戻ってくる子どもを親が本当に殺さんばかりの態度で攻撃します。
これは一言で言えば、種の保存のためなのですが、実は人間はこの逆で子どもの方から旅立っていくスタイルをとっていきます。
これが反抗期と言われるもので、親のやり方に反発し、自立していくプロセスなのです。
引用元:カウンセリングサービス
思春期はアイデンティティが確立される時期で、周りと比べて極端な優越感や劣等感を持ちやすくなります。
また、性の目覚めもあり、男の子は特に異性である母親を避けるようになっていきます。
親にとっては理不尽だと思う態度や要求も、自分のアイデンティティを確立するための行動です。
高学年のわがままに接するときは、「責任」がキーワードです。
基本的にひとりの人間として扱い始めることが大切で、親も対等の立場を意識して子供に話しかけてください。
そしてひとりの人間として扱うということは、徐々に責任も取らせるということです。
自分のやったわがままに対して親は結果を提示し、責任を取らせることを意識しましょう。
しかし、子供が欲しいのは「親の愛情」であるのは低学年と変わりません。
対話もできず難しい時期ですが、「根底に愛情はあるよ」ということは伝え続けていってください。
小学生のわがままを直す方法!具体的な事例の対処法
▶ 暴言を吐くときは「怒りのスイッチ」を入れないことを心がける
▶ 宿題をしないときは、ルールを守りやすい環境づくりを
▶ 「学校行きたくない」はまず子供に共感をする
子どもの心理を踏まえたうえで、具体的に親はどういった接し方をすれば良いのでしょうか。
暴言を吐く・悪態をつく
心理学で怒りは「わかってくれない」「助けてくれない」「愛してくれない」そう自分が思うときに出てくるものだと言われています。
これを心理学の用語では「自己愛憤怒」と言います。
暴言の裏側に、愛情が欲しい、わかってほしいという気持ちがあるのです。
特に男脳は女脳に比べて左右脳の連結が弱く、感情の表現が苦手なので、相手に分かってもらえない気持ちをうまく表現できず、暴言としてぶつけてしまうことがあります。
これは各学年で共通して言えるのですが、たいてい親が細かく指示したときや命令形の口調・否定形の口調で話した時に子供のスイッチが入ります。
まずはできる限りスイッチを入れない声がけが大切です。
○ 「そろそろ用意してくれると助かるんだけど」「今日は準備に時間がかかったから明日は早めに起きようか!」
× 「ダメでしょ!」「早くしなさい!」
上記の「○」のように、提案型の声がけをすると、子供のスイッチが入りにくくなります。
そしてそれ以前に、暴言の回数を減らすことも大切です。
母親だって人間ですから、イライラしてつい子供のスイッチを入れてしまうことがあります。
暴言は叱ってもいいですが、ずっと叱り続けていると子供にストレスを与えるだけで暴言は治りません。
叱る・怒鳴るのは一言で。
その後はできる限り大人が冷静になって、暴言を吐かれて悲しい気持ちを伝えましょう。
▶「低学年」はできる限り話を聞いてあげる
言葉が未熟な低学年は、母親に気持ちをうまく伝えられず、怒りのスイッチが入るのが早いです。
筆者の息子も低学年の時に、暴言を吐いていた時期があります。
この時は時間がなくて、つい子供の話を聞かずに親が「あれやりなさい、これやりなさい」と命令していました。
低学年のころは、親が目を見て子供の話を聞いてあげていると、子供の精神がだいぶ落ち着いてきます。
また、勉強や学校の話ばかりではなく、子供の好きなゲームの話など、本人が楽しい話をすることを心がけましょう。
▶「中学年」は諭すように叱る
中学年はギャングエイジ。
悪さをしたい年頃です。
本当はいけないことだとわかっているのに、悪いことがカッコイイ的な感覚で暴言を吐くことがあります。
頭ごなしに叱ると、子供も反発してくるのがこの時期の特徴です。
○「なんでそういうこと言うの?それ、いっちゃいけない言葉だってわかるでしょ」
× 「いい加減にしなさい!!」と怒鳴る
上記の「○」のように、怒鳴るのでなく、冷たい声で諭すように言う方が効果的です。
▶「高学年」は自分で考えさせる
高学年の場合、しっかり今まで躾をしてきたならば、人がどれだけ傷つくかはある程度わかっています。
それでも暴言が止まらないのは、思春期のイライラと親への甘えが混じっているからです。
普段はできる限り自主性を重んじて放っておいても、暴言が出たら親も傷ついたアピールをしましょう。
○「それ、自分が言われたらどう思う?私はすごく傷つくよ」と対等な立場で伝える
× 「そういう言い方するのはいけない」と上から目線で叱る
高学年になれば、低学年みたいに切々と説教しなくても親が傷ついていることは理解できます。
自分が言った言葉が相手を傷つけた。
自分でその後の行動は考えさせましょう。
ゲームばかりで宿題をしない
「今やろうと思ったのに!」「今セーブしようと思っていたのに!」
小学生に宿題の話をすると、一度は聞くセリフですよね。
屁理屈や言い訳は、「自分が悪いことをしている」という意識と「失敗したときにごまかせるかな」という弱気な気持ちの裏返しです。
人間は大人でも嫌なことを回避したくなる心理が働きます。
やらなければならないことほど、ついつい後回しにしてしまうわけです。
ただ、ゲームの場合は「中毒」である可能性もあるので、ゲームを取り上げたら暴力を振るうなどの場合は専門的な施設でカウンセリングを受けましょう。
▶「低学年」はルールを決めて声がけをする
ゲームって楽しいもので、やっていると大人でも時間を忘れてしまいます。
低学年のうちは「やめなさい!」の前に、親が
「もうそろそろ約束の時間になるから、あと一回ね!」
「あともう少しで時間になるけど、どれくらいでセーブできる?」
など声がけをして、自分から時間内に電源を消せるように誘導しましょう。
そして、ゲームを時間内に終わらせて褒めることで、「子供はルールを守ること=周りの人もいい気持ちになる」ということを覚えていきます。
▶ 「中学年」はゲームを始める前に決めさせる
中学年は自立心が出て、自分でできる、やれると思いがちです。
注意をして「うるさいなぁ、わかってるよ」と言われると、「わかってないから言ってんじゃん!!」と言いたくなりますよね。
中学年の場合はゲームをする前に「宿題をやる時間」をいつにするか考えさせ、本人の口から言わせましょう。
○「今日宿題の量はどれくらい?何時くらいにゲームやめれば終わる量なの?」と聞く
× 親が宿題の内容を見て「今日は5時に宿題を始めてね」と決めてしまう
毎回その通りにやるとは限りませんし、子供が言った時間に宿題が終わるとは限りませんが、自分で決めたことは命令されたときよりも素直に動きます。
習い事とかを始める時に、「宿題が終わっていないと行かせない」などのルールを決めてしまうのもありです。
▶ 「高学年」はルール作りから参加させる
高学年はある程度大人扱いすること、「自分がやったことへの責任」を取らせることが大切です。
親としては子供が困らないように宿題を先に済ませなさいと言いますが、敢えて声がけはせずに宿題を忘れて学校で恥をかいたり、次の日にたくさんやらされる経験も必要です。
「あなたはもうある程度大人だから、任せるわよ」という態度で接してください。
ただ、何も言わずにゲームばかりやるようになってしまったら困りますよね。
「ゲームは一日一時間」など親が押し付けたルールではなく、家族会議をして対等な立場で「お互いが納得できるルール」を決めて、そのルールは守らせるようにしてください。
「学校に行きたくない」と言い出す
学校に行きたくなくなる子は、真面目な子が多いです。
周りが行け行けというほど「親やみんなに迷惑をかけている」という意識が強くなり、余計に学校に行ってみんなに会うのが辛くなっていきます。
親としてはいろいろ尋問したり、激励したりして、なんとか学校に行かせたくなりますが、まずは親が「そうなんだ」とただ共感してください。
そして、自分の意見を聞く前に「あなたはどうしたい?」と聞いてみましょう。
▶ 「低学年」はできることを一緒にやってあげる
子供が「学校に行きたくない」と言い出したとき、低学年はまだ自分の気持ちを上手に親に伝えられません。
子供自身も説明できないので、何が理由かは大人に分かりづらいですが、不安を抱えていることは確かです。
低学年が学校に行かないと言い出した時は、まず「どこまでならできるか」を探ってみましょう。
「おかあさんといっしょだったら校門まで行けるかな?それとも一緒でもむずかしい?」
「嫌な気持ちになったら保健室に行ってもいいから学校に行ってみる?」
「お母さん仕事だから、おばあちゃん呼ぼうか?」
このように、いきなり大きなハードルを乗り越えさせるのではなく、本人にできることを聞き、小さなハードルを一つずつ超えていくことで克服していきましょう。
▶ 「中学年」は子どもと一緒に解決していく意識を持って
中学年から友達との関係が密になっていきます。
学校に行きたくない原因は、先生や友人とのトラブルが理由として多く上がってきます。
運動音痴の自分をクラスのみんなが笑った、先生が厳しいなど、学校に行きたくない具体的な理由が本人の中でできてきます。
けれども、子供がその理由を親に言いたくない、知られたくないと思うのもこの時期によくあることです。
大人としては理由を知り、問題を解決すれば不登校はなくなると考えますが、子供は親に手を借りるのではなく自分の力で解決したいと思っているかもしれません。
学校に行かなくても宿題や勉強は必ずして欲しいとか、行けない時は行かなくてもいいけれども行きたくなったら一日でもいいから行って欲しいなど、親の希望を伝えた上で、子供にある程度行動を選ばせましょう。
▶ 「高学年」は外から吸収させる
高学年は親と話したがらない子も増えてきます。
こちらとしては歩み寄りたいのに、対話ができないとついつい色々と大人の理屈を言ってしまいますが、これは逆効果。
高学年になったら、普段から塾や習い事など意識的にたくさんの大人、たくさんの社会に触れさせることで、子供が外から学んできます。
親の言うことは聞きたくなくても、尊敬する大人や少し年上の先輩の言うことはちゃんと聞き、吸収するのが反抗期です。
親以外に相談する場所を作るには、子供が自主的にやりたいと言ってきたことを積極的にチャレンジさせることが必要です。
友人関係や習い事など、親があれこれ口出ししてあの人はダメ、ここなら大丈夫と決めてしまったらそれは子供の自立心を妨げます。高学年になったら親はいろいろ言いたいのをぐっと我慢して見守りに徹し、失敗をしたときにはフォローに回ってあげてください。
家から出られないようならネットの世界に触れさせるのもひとつの手です。
スマホゲームの「ポケモンGO」で引きこもりの子が外に出た事例もあるように、学校以外のいろいろな世界があるということを身を持って知ることが大切です。
さいごに
子育てに万人に通用する正解はありません。
子供の性格によっても、そのときの状況によっても正解はころころ変わります。
男の子は表現が未熟なだけで、わがままにはそれなりの理由があります。
その理由をわかろうという気持ちがあれば少しずつ子供の態度も変わってきますし、理解することができれば子供も素直に受け入れてくれます。
すぐ結果を求めないで根気よく子どもと向き合うと、少しずつ親も子供も変わっていきますよ。